過去2回開催した《 あんとき 》マーケットにも出店いただいた、古今東西のヴィンテージマガジンを揃える神田神保町の古書店「 magnif ( マグニフ ) 」。情報通の方ならご存じかもしれませんが、現在のカラフルな外観の店舗での営業は年内いっぱいで終了ということで、ミミック編集部もご挨拶を兼ねてお店を訪ねてきました。
そしてせっかくなら、この機会にストリートファッション&カルチャーを知ることができる1冊にも出会いたい。そこで今回は、80年代後半〜2000年代初頭の《あんとき》のストリートをはじめ、各時代のカルチャーや流行を読み解くうえで欠かせない “キーブック” を、店主の中武康法さんに厳選して紹介してもらいました。
ストリートファッションの歴史を深掘りしたい人はもちろん、当時の熱量や空気感を知りたい読者の皆さんにとっても、格好の入門編になるはずです
中武康法( なかだけ・やすのり )さん
1976年、宮崎県生まれ。大学進学を機に上京し、神保町の古書店で経験を積むなかで、過去のファッション誌やカルチャー誌が持つおもしろさと重要性に魅了される。その想いを形にすべく、2009年に雑誌専門古書店「 magnif(マグニフ)」を開業。国内外のファッション誌・カルチャー誌・写真集などのヴィンテージマガジンを中心に、時代の空気を伝える “雑誌のアーカイブ” に取り組む。ファッション関係者や編集者、クリエイターからの信頼も厚く「 雑誌カルチャーの聖地 」として支持を集めている。
ストリートファッション 1980-2020 ― 定点観測40年の記録

著者:ACROSS 編集室 出版社:PARCO出版 発刊日:2021年8月14日
過去40年分のストリートファッションの歴史をこの1冊に凝縮!

まず最初に紹介したいのが『 ストリートファッション 1980-2020―定点観測40年の記録 』( PARCO出版 )です。私が日本のストリートファッションや流行を追ううえで、いちばん参考にしている本になります

発売当時も話題になりましたよね。あらためて、この本がどんな内容なのか教えていただけますか?

制作している ACROSS 編集室というのは、ファッションとカルチャーを横断的に調査・分析する、パルコのシンクタンク的な部門です。1980年代からずっと、渋谷・原宿・新宿の3地点でストリートファッションを “定点観測” していて、現在はウェブマガジンになっていますが、当時は『 月刊アクロス 』や『 流行観測アクロス 』という雑誌を通じてその分析を発表していました。
この本は、そこから蓄積された膨大なデータを再編集して、1980〜2020年の40年分の流れを一気に読み解いた一冊なんです

中武さんが、特に “参考になる” と感じているところはどんなところですか?

当時の流行の最先端にいる若者たちのスナップ写真がまず圧倒的なんですが、写真だけではなくて、着ている服のクレジット、好きなブランド、愛読雑誌、よく行くショップ……と、かなり細かい個人データまで掲載されているんです。そこから、当時の若者たちのリアルな嗜好や傾向を詳しく知ることができます。
さらに、編集室による “時代ごとの総括” が加わることで、80年代〜20年代初頭の空気感やスタイルの変遷が、俯瞰してつかめる構成になっています

この時代のストリートスナップといえば『 FRUiTS 』も印象的ですが、この本はより広いファッションスタイルをカバーしていて、資料性も高いですね

そうですね。ACROSS はファッションやカルチャーを学術的に研究するような立ち位置なので、ちゃんとした一次情報にもとづいた “エビデンスのある編集” が徹底されていると思います。撮影も取材も全部自分たちでやっているので、資料としての精度も高いですよね

いまはウェブや SNS に、真偽のあいまいな情報も多いですしね

実はマグニフをオープンさせた際、かなり早い段階で ACROSS さんが取材に来てくれたことがあったんです。そのキャッチアップの早さにも驚いたんですが、何よりも担当編集者の方の仕事ぶりがとても誠実で。そうした経験もあったので ACROSS の方たちのつくるものには非常に信頼を寄せているという一面もあるんです

やはり、働いている方たちの仕事への向き合い方は、つくるものに如実に表れますよね

まさにそうで、神保町の一角にできたばかりのマグニフが ACROSS さんに紹介してもらったことで、業界のさまざまな方たちに知っていただけるようになりました。店が発展するひとつのきっかけをいただいたので、そういう意味でも感謝しています

編集部の人間性も含め、“推せる一冊”というわけですね

それと、この本にはもうひとつ前編的な位置づけで『 ストリートファッション1945~1995 ― 若者スタイルの50年史 』( PARCO出版 )という関連書籍があるんです。この2冊を通して読むと、戦後の日本のストリートファッションを網羅的につかむことができます。たとえば、ほかの本で知った情報を照合したいときにも「 このファッションスタイルはどんな系譜にあるのか?」を俯瞰して理解しやすいですね


主にネットで情報を集めている若い人や、これからストリートファッションを学びたい人にも最適ですね

そう思います。もちろん Web Across でも過去のアーカイブを閲覧できますが、こうして戦後からの流れを一冊にまとめた本は、いまの時代において “貴重なマーケティング資料” としての価値も持っていると思います
AMETORA 日本がアメリカンスタイルを救った物語

著者:デーヴィッド・マークス 出版社:DU BOOKS 発刊日:2017年8月18日
アメリカンカジュアルの真の継承者は、実は日本だったという衝撃

次に紹介いただくのは『 AMETORA 日本がアメリカンスタイルを救った物語 』( DU BOOKS )です。これは海外から見た日本のアメカジファッションについて書かれた本ですよね

そうです。著者はデーヴィッド・マークスというハーバード大学出身の文筆家で、いわゆる “ガチのアイビーリーガー” です。ですが「 裏原宿 」をテーマに卒業論文を書くほど、日本のカルチャーに深く入り込んでいる方なんです。たしか “猿の惑星” が好きで、そこからエイプ ( A BATHING APE® ) に興味をもった…みたいなエピソードもあったと思うんですが、とにかく、日本のストリートファッションの文化からビジネス的な部分まで、徹底的に深掘りしています。
そして、その結果、彼がたどり着いたのが「 アメリカで生まれたファッションスタイルを、むしろ日本が研究し、温め、発展させてきた 」という視点なんです

たしかに、リアルマッコイズやバズリクソンズのようなレプリカ文化や、アメカジをバックボーンにもつ “裏原” の流れなど、日本独自のファッションの進化ってありますよね

そうなんです。アメリカントラッドといっても、ブルックスブラザーズやラルフローレンだけの話ではなくて、ジーンズからボタンダウンシャツまで、日本人は “本国以上に” 幅広くアメカジを研究してきたんです
たとえば、その一例が写真集の『 TAKE IVY ( テイクアイビー ) 』です。アメリカの名門大学を中心に流行した「 IVY 」と呼ばれるファッションを、VANという日本のアパレル企業のメンバーが現地取材した一冊。実はその1965年当時、米国ではもう既に「 IVY 」は廃れ始めていたという逸話がありますが、日本の若者たちにとってはそれ以降も「 IVY 」はお洒落のひとつの象徴として愛され、幾度となくリバイバルしてきました。そうした “日本人が研究し続けたアメリカンスタイル” が、この本が提唱する「 AMETORA 」の核心なんです

日本のオタク気質と探究心が、アメカジを独自の文化にしてしまった面もある気がしますね。ヴィンテージデニムなんて最たる例ですよね

本当にそうだと思います。アメリカで元々は単なる仕事着や日常着だったリーバイスのデニムやレッドウィングのワークブーツが、日本では “文化的なアイテム” として再解釈され、ファッショナブルな文脈へ取り込まれていきました。
90年代の “裏原” の人たちがミリタリーウェアをファッションアイテムとして取り入れる動きなどもあったと思いますが、それらも日本人ならではの視点でアップデートされたアメリカンスタイルといえるんだと思います

先ほど『 TAKE IVY 』の話が出ましたが、あの本は何度も復刻されるほど、アイビースタイルのバイブルになっていますよね

はい。最初は1965年に刊行されて、その後70年代、80年代…と、トラッドブームに合わせて何度も復刻されています。最近ではアメリカ版が再刊されて海外でも注目されていて、「 アイビーってこんなに格好よかったんだ 」と、逆輸入的に評価されている側面もあるみたいですよ

海外の研究者がここまで日本のファッション史を深掘りした本は貴重ですよね。AMETORA と1つに括ってはいますが、紹介されているスタイルは意外と幅広く紹介されていますし

まさにそこがこの本のおもしろさだと思います。日本のカジュアルファッションの歴史を“ドキュメンタリー的” に知ることができる。さっきの『 ストリートファッション1980–2020 』が “資料集” だとしたら、こちらはその背景を理解するための “物語” の本と言えます。研究書でありながら、読み物としてもおもしろい。そこが多くの人に読まれる理由だと思います

表紙のイラストを描いているのは、日本のファッションイラストレーターの草分けである穂積和夫さんですね

そうです。穂積さんは VAN の広告や『 メンズクラブ 』のイラストなど、日本のメンズファッションの黎明期から活躍されてきました。日本のアイビーファッションを語るうえでは欠かせない存在です
70s原宿 原風景

編著:中村のん 出版社:DU BOOKS 発刊日:2019年5月10日
原宿カルチャーはいかにつくられたのか? その源流となる70年代をたどる

続いて紹介するのが『 70s 原宿 原風景 』( DU BOOKS )です。ざっくり言うと、70年代の原宿を形づくったクリエイターたちのインタビュー集です。『 70’HARAJUKU 』という同じタイトルの写真集もあるんですが、ここで紹介するのは、両書の作者であるスタイリストの中村のんさんが聞き手となって、当時の関係者に話を聞いてまわったインタビュー版のほうになります

スタイリストの方ですよね?

はい。日本のスタイリストの “元祖” と言われる高橋靖子さん( デヴィッド・ボウイのスタイリングを手がけたり、黎明期の『 anan 』でも活躍 )のアシスタントだった方です。そうした流れの中で築かれた縁をもとに「 70年代の原宿 」を語るうえで欠かせないキーパーソンに方たち当時の原宿の様子を語ってもらっています

この本はその後の原宿の源流を知れるような一冊でしたよね

そうですね。象徴的なのは、当時の原宿のシンボルだった “セントラルアパート” と、その1階にあったカフェ「 レオン 」です。表参道の神宮前交差点近くにあったその建物には、デザイナーや編集者、ミュージシャンなど、当時の “業界人” が事務所を構えていて、その1階にあったレオンがちょっとしたサロンになっていました。クールスのメンバーが溜まっていたり、のちに藤原ヒロシさんも出入りするようになったりと、原宿カルチャーの核みたいな場だったんですね。
そこに、原宿初期のブティックとして知られる MILK ( ミルク ) や、その少しあとの原宿を代表することになるクリームソーダ、さらにははっぴいえんどや中西俊夫さんといったアーティストまで、さまざまなブランドや人物が折り重なっていく。そういう “クリエイターの街・原宿” が立ち上がっていく様子が、いろんな人の証言とともに明らかになっていきます

1964年の東京オリンピックの選手村になったコープオリンピアも原宿が “人の集まる場所” になるきっかけなったんですよね

そうですね。本の中では、オリンピックにちなんで建てられたコープオリンピアやオリンピア・アネックスなどの話も出てきます。そのあとに、カフェやブティック、レコードショップ、編集プロダクションが入り混じるようになっていって、“若者の街・原宿”がかたちづくられていきました。そのあたりの流れが、具体的な店名や人名とセットで語られているのがこの本のおもしろさだと思います

それぞれの “記憶の原宿” がインタビュー集として語られるわけですね

証言者ごとの思い出話なので、ところどころ誇張や食い違いもあるかもしれません。でも逆にそれがリアルで「 本当はこうだった 」と一枚岩で決めつけるのではなく、いろんな人の視点で見た “70年代の原宿” を知れるのがいいんだと思います

当時を体験していない世代からすると「 あ、原宿って最初から “今の原宿” だったわけじゃないんだ 」とか「 こんな雰囲気の中から、あのブランドやあの人たちが出てきたんだ 」といった驚きがありますね。できることならばこの時代を経験したかったと思います

“裏原” カルチャーや90年代ストリートカルチャーが好きな人も、DCブランドやモードファッションが好きな人でも、その日本における源流をたどりたい方にはぴったりの一冊だと思います
「話の特集」と仲間たち

著者:矢崎泰久 出版社:新潮社 発刊日:2005年1月22日
セントラルアパートにクリエイターが集うきっかけとなった編集部の回顧録

今しがた話にあがったセントラルアパートを中心とする文化圏の話を、別の角度からもう一歩踏み込んで知れる本ですね

それが、『「話の特集」と仲間たち 』( 新潮社 )です。これは今回のテーマである、流行やファッションを知れる本から少し外れてしまうんですが、セントラルアパートまわりの空気をもっと深く知りたい人向けの一冊になっています。
『 話の特集 』というのは、1965年から1995年にかけて発刊されていたミニコミ的な雑誌で、反体制的なテーマを扱いながら、文章とイラストで社会への問題提起を発信していました。
その中心にいたのが、この本の著者で『 話の特集 』の編集長を務めた矢崎泰久さん。そこにアートディレクターの和田誠さんやイラストレーターの横尾忠則さん、写真家の篠山紀信さんといったクリエイターが関わっていくようになるんですが、この『 話の特集 』の編集部があったのがセントラルアパートだったんです

当時のセントラルアパートには『 70s 原宿 原風景 』に登場するクリエイターたちよりもひとつ上の世代も集まっていたんですね

ええ。実は最近、当時を知る大御所フォトグラファーとお話しする機会が何度かあったんです。その会話の中でセントラルアパートの話題があがったので「 セントラルアパートに最初に出入りするようになった人たちは誰だったんですか? 」とお聞きしたんです。そしたら「 一番早かったのは『 話の特集 』の連中だろうね 」とおっしゃっていて。
この本にも、そのあたりの証言が出てくるんですが、どうやら『 話の特集 』の編集部が1967年にセントラルアパートに拠点を構えたことで、徐々に気鋭のクリエイターたちが集まる場所になっていったようなんです

やっぱり、当時の雑誌といえば、メディアとしての影響力も大きかったはずですよね

そうだと思います。今だったら、マスメディアに対抗するメディアはインターネットだと思いますが、当時は「 テレビや新聞が描く “世間” に対して、本当はもっと尖った考えや価値観があるんだ 」という意見を伝えるのは、雑誌やミニコミの役割だったはずなんです。
『 話の特集 』も反権力的なジャーナリズム色の強い雑誌で、政治的な話題や社会批評的なテーマを扱うことが多かった。この本を読むと、そういう人たちがセントラルアパートに出入りしていたことがわかって、原宿のファッションカルチャーの “前史” が少し見えてくるようになるんですよね

『 話の特集 』といえば、ビートルズ来日のレポートをまとめた『 ビートルズ・レポート 』も有名ですよね

そうですね。ビートルズもそうですし、先ほど話にあがったアイビースタイルもそうですが、日本ではどちらかといえば不良の音楽、不良のファッションとして見られていた。そういったカウンター文化は『 話の特集 』のようなミニコミ的メディアとは、距離が近かったはずなんです。
この本自体には、ファッションの具体的な情報が載っているわけではないんですが『 70s原宿 原風景 』を読んでセントラルアパートに興味をもった人が「 じゃあ、その少し上の世代にはどんな人たちがいて、どんなことをしていたのか 」を知るには、とてもおもしろい本だと思います

思いっきりざっくり言ってしまえば、裏原宿という原宿の小さな一角にさまざまな才能が集結して “裏原” カルチャーが形成されていったように、その数十年前にも同じ原宿のセントラルアパートで、同じようにクリエイターが集まるムーブメントがあったということですね

自分もタイムスリップできるなら、ぜひ一度体験してみたい世界です
原宿ゴールドラッシュ 青雲篇

著者:森永博志 出版社:ワニブックス 発刊日:1985年12月1日
ロカビリーで一山当てた!元祖・原宿ストリートの成功者の半生に迫る

続いて紹介するのは『 原宿ゴールドラッシュ 青雲篇 』( ワニブックス )です。これは、原宿のロカビリー文化を語るうえで外せない存在、クリームソーダ/ピンクドラゴンの生みの親・山崎眞行さんの半生を追った本です。編集者/作家の森永博志さんが聞き書きの形でまとめたもので、版元や版によって微妙に内容が異なる複数のバージョンが存在します。うちの店にもこのあたりに詳しいお客さんが多いので「 この版とこの版では書いてあることが違うんだよな 」みたいな話を聞くこともあります

70年代からの原宿には、様々な才能が集まり、まさに「 ゴールドラッシュ 」のようにカルチャーが続々と芽吹いていったというのが窺い知れる読むべき1冊ですよね


ピンクドラゴンは僕らが遊びに行くようになった頃の渋谷でも、あの派手な外装で一際目立っていました



それは「ストリート」の定義によるかもしれませんが、確かにその表現がしっくりくるかもですね。ピンクドラゴンのスタッフを中心に結成されたロカビリーバンド「 ブラック・キャッツ 」がブレイクして、80年代のいわゆる「 ネオロカビリーブーム 」を先導したのは有名な話しですよね。その少し前には、矢沢永吉さんやキャロルのメンバーも山崎さんの店に出入りしていたりして、まさに日本のロックンロールと不良文化のひとつの拠点になっていたと思います


先ほどこの本には色んな版があるという話をしましたが、中には、花の種が付録で付いていて「 春になったら、この種を持って原宿に来てください。そして、土を探して種を植えてください。何処かに、まだ花を咲かせる土が残っているはずです 」といったメッセージが添えられているものもあるんです。自分は夢をかなえるために原宿に種を蒔いて、花を咲かせて成功させたから、次の世代にもそうした “成り上がり” ストーリーを手渡したい ── そんな想いがあったことも感じ取れますね

この本自体も今ではプレミアがついて “成り上がっている” んですよね


《 あんとき 》のストリートでも多く見かけましたが、やっぱり、ヤンチャな人がこれまでにない発想でお金を手にするストーリーは見ていて( 読んでいて )爽快ですよね
NYLON100% 80年代渋谷発ポップ・カルチャーの源流

著者:ばるぼら 出版社:アスペクト 発刊日:2008年7月22日
ニューウェーブの中心地、NYLON100%が生んだ新たなポップカルチャー



そうですね。東京で海外のニューウェーブの最新音楽やビデオクリップがいち早く流れるような発信拠点で、それこそプラスチックス界隈の人たちや P-MODEL、戸川純さんといった方たちが出入りしていたようです。店内も白を基調とした無機質な感じで、当時のニューウェーブの空気感を表したような内装だったみたいですね

本は当時の関係者の方たちのインタビューをもとに構成されています

この著者のばるぼらさんって、私は直接面識はなくともSNSなどで勝手に追いかけているんですが、おそらく“超” が付くほどの雑誌コレクターで、世の中のありとあらゆる雑誌を保有しているんじゃないかと思えるほどなんです。何かのキーワードが話題になったときに、「 この言葉が初めて使われたのはどこどこだ 」みたいな事がすぐに追えるような方なんです。この本でも、当時のあらゆる雑誌からの引用や細かな注釈が豊富に盛り込まれていて、単なる懐古本とはまったく異なる、資料集のような完成度です


そんなことがあったんですね(笑)。この本を読んで思うのは、先ほどのレオンもそうなんですが、ひとつの文化を形成していくには、やはりコネクションが大事なんだなということです。コネといってしまうと、良くないイメージもあるかもしれませんが、当時のカルチャーには「 自分が何か有益な情報を持っていて、それを誰かに教えて、その代わりにまた新しい情報をもらう 」みたいな、コネクションを通じた循環があったんだと実感します

たしかにそれは感じますね。90年代に入ると若者文化の中心地は裏原宿に移っていきますが、そこでも藤原ヒロシさんを中心に当時のキーパーソンたちがコネクションを形成したことは共通していますね

ちなみに今回の話にあがっているような原宿界隈について興味をもった人には、70年代から80年代位の『 anan 』をチェックするのをおすすめしたいです。当時の『 anan 』って、原宿のセントラルアパート界隈の人たちが創刊号の頃からバンバン登場していて、クリームソーダ界隈のショップ情報もよく載っています。80年代に入っても、ギャルソンなどのDCブランドがフィーチャーされる一方で、プラスチックスの佐藤チカさんやロン毛でヴィヴィアンの服を着た藤原ヒロシさんなどのニューウェーブな面々もいっぱいで、とにかく当時の人・場所・空気がかなり詰まっているんです。特に1986年の「 カフェ・ソサエティ 」という特集なんかは、当時のシーンの最前線にいた人たちが集まる場所を丸ごと一冊で取りあげています。もしもこの辺のバックナンバーを揃えることができたら「 この人もこの界隈にいたのか! 」 という発見の連続になると思いますよ
いま、あらゆるファッション雑誌が入手困難になる中、まだ『 anan 』だけは比較的手にとりやすい雑誌ではないかと思います。表紙だけみてピンとこなくても、是非ページをひらいてみれば面白い記事が見つかるかと思います
丘の上のパンク -時代をエディットする男、藤原ヒロシ半生記

著者:川勝正幸 出版社:小学館 発刊日:2009年2月26日
藤原ヒロシという “現象” を通じて、ストリートの歴史を解き明かす



この本は本当にとんでもない一冊ですよね。藤原ヒロシさんの半生が、とてつもない量の周囲の証言とともに整理されている。編集力という観点でもこれを超える1冊はそうそうお目にかかれない






magnif の新店舗が決定!
現在の店舗が建物の老朽化により移転となるマグニフですが、この度、移転先が決定!現在の店舗のすぐ近くにある東京堂書店のビル二階が新店舗の場所となります。新店舗のオープンは2026年1月中旬の予定となりますので、ぜひ新店舗でも《 あんとき 》を体感してください!
現店舗営業最終日:2025年12月20日
新店舗オープン予定日:2026年1月中旬
《 新店舗 》
住所:東京都千代田区神田神保町1-17 東京堂神保町第1ビルディング2階
電話:03-5280-5911
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