ミミック・メンバーが《あんときのストリート》を振り返る上で重要な映画やドラマをピックアップ!年末年始のお供にぜひ!
野田:ブレックファスト・クラブ (’85)
このテーマで作品を選ぶとなると、雑誌の「有名人が選ぶオススメ漫画」に必ず「サンクチュアリ」が出てくるように、「KIDS」「オクトパスアーミー シブヤであいたい」「ウォーリアーズ」といった映画がまず頭に浮かぶところだけど、ボクは「ブレックファスト・クラブ」を推したい。
監督はボクら世代にとっては永遠に頭の上がらないジョン・ヒューズ先生。84年に公開された「すてきな片想い」や翌85年公開の「ブレックファスト・クラブ」によってアメリカの学園生活をボクらに教えてくれた大恩人である。
個人的にボクは中学時代の経験によって、その後の人生における下地が形成されると思っています。その証拠にこの中学時代にあらゆる経験を済ませておかないと高校デビュー、大学デビュー、社会人デビューと一生「デビュー野郎」のレッテルを貼られることになる。特にストリートキッズにとっては「先を捨てて今を生きる」ことが求められます。それは「遊ぶのを我慢して必死に勉強して良い大学に入って、よい会社に入って…」と先々モテることを選択するのではなく、「今を輝かせるためにこの瞬間を精一杯遊ぶ」ことで今モテることを選択しているからです。
そしてストリートの厳しい掟の中では、このデビューの早い遅いはその後のセンスやリアルさを決定付ける非常に重要な要素になります。「ブレックファスト・クラブ」で描かれたスクールカーストならぬ「出身地カースト」や「いかに早く経験しているかカースト」はその後のストリート人生において、一生付きまとってくるからです。
そして中学時代に済ませておかないといけない禊の1つに、この「ジョン・ヒューズ」があると思っています。なぜなら王道を抑えずして、サブカルチャーは語れないと考えているからです。といいつつも残念ながらボクは公開年の85年には不覚にもまだランドセルを背負っていたためにリアルタイムで観れていなかったのですが、中学時代にこの映画と出会います。
ストーリーはこんな感じ。
同じ高校に通う「学校のクイーン (女性)」「スポーツマン (男性)」「不良 (男性)」「ガリ勉 (男性)」「不思議ちゃん (女性)」といった仲良しグループがまったく違う5人が、とある休日に学校の図書館に呼び出され「自分とは何か」という作文を書かされるという罰を受けることになります。しかし壮大なテーマを前に誰しもが苦戦する中、5人は少しづつ打ち解けだし学校や家庭に対する想いを語ったり、マリファナを一緒に吸ったりと、徐々に心を通わせていくのである
冒険もなければ戦いもない、普通の高校生たちの1日を描いた作品。しかも舞台は学校内だけ。それなのに青春映画に必要な要素をすべて揃えました感ですよ!まぁ、青春映画に必要なものはジョン・ヒューズが作ったとも言えるので、当然と言えば当然なのかもしれませんが。
にしてもですよ。訳してしまえば「朝食部」ですよ !? それが「ブレックファスト・クラブ」なんて英語で言われてしまうだけで、オシャレに早変わり。当時、自転車で登校する際にはヘルメット着用を義務付けられていた埼玉の中学との圧倒的な差よ。。。せめてもの抵抗にステッカー貼りまくって、粋がってた自分の鼻を見事にへし折られましたよ。そしてジョン・ヒューズ先生からも学ぶのです。最後はやっぱり不良がモテるんだなって。
もしジョン・ヒューズを通らないで大人になってしまった人がいるとしたらこう言いたい「 心が死んでますよ ( by アリソン ) 」って。いくらSNSでイキって頭よく見せても「通ってきたか・通ってきてないか」っていうのはすぐにバレると思う。アリソンはそんな姿を見て「心が死んでる」と言うことでしょう。
観ていない人、観たけど心が死んでしまっていた人、この年末年始を利用して、大事な大事な忘れ物をとりにいきましょう。今ならアマゾン・プライムで無料ですよ。
遠山:マイネーム・イズ・アール(’05〜’09)
まず最初に断っておきますが、本作『MY NAME IS EARL』は“《あんときのストリート》を振り返るうえで重要な映画・ドラマ”ではないです。では、なぜにこの作品をレコメンドしたのか?それは、映画『KIDS』に登場していたような少年たち、つまりスケボー、酒、女、喧嘩、ドラッグなどなど…ストリートどっぷりの青春時代を過ごした連中は、一体どんな大人になったのか?その姿の一例を示したかのような作品だと感じてしまったからなのです。
こちら、あらすじ
主人公アール J. ヒッキーは、人生で間違った道ばかりを歩んできたせこい悪党。ある日スクラッチくじで10万ドルを当てるが、その10秒後には車にはねられ、せっかく当てた宝くじもなくしてしまう。さらに、かねてから浮気をしていた妻のジョーイから一方的に離婚されてしまう。
入院先の病院でたまたま見ていたテレビ番組の出演者が「自分が成功できたのは他人にいいことをしてきた結果だ」と語っているのを聞いたアールは、自分の今の有り様は今まで犯してきたカルマの報いと痛感する。より良い人生を求めたアールは過去のカルマをリストアップし、「悪行・悪戯をした相手のところへいって償いをする」ことを決意する。
悪戯された側は覚えていなかったり、もう許していて忙しかったり、アールのことが憎くて顔も見たくなかったりと、アールの「善意」はなかなか伝わらないが、馬鹿な弟ランディと滞在先のモーテルで働くセクシーなメイドのカタリーナ、アールがビールを飲みに行くクラブシャックのオーナーのダーネル、アールの別れた妻ジョーイらの協力もあり、カルマのリストは次々と消化されていく。
引用:ウィキペディア
アメリカのNBCで放送されていた30分コメディドラマで、日本ではFOXチャンネルで放送されていました。あらすじだけ読むと、「スケート感はおろか、ストリート感なんていっさいないじゃん」となるでしょう。否、この作品でもっとも重要なのは、主人公アール・ヒッキーを演じる俳優、ジェイソン・リー。
ジェイソン・リーといえば、いまだ語り継がれる超・名作スケートビデオ『Video Days』でのパートや…
盟友クリス・パストラスと立ち上げたシャレオツモダンなスケートブランド、『ステレオ』…
実はソニック・ユースのMV(こちらのディレクションは『Video Days』同様、スパイク・ジョーンズ)に登場していたり…
と、スケーターとしての素晴らしい経歴◎、クリエイターとしてのセンスも抜群◎、立派な眉毛&もみあげも◎。そんなナイスガイです。役者としての経歴もなかなかで、有名所だと『あの頃、ペニー・レインと』や『バニラスカイ』なんかにも出演しとるのです。
そして今回ピックした『マイネーム・イズ・アール』では、主演だけでなく製作にも携わっているという力作。ちょっと観てみましょう。
字幕がなくても、田舎町でろくでもない生活をおくる、しょーもないおっさんとその仲間(?)たちの物語。つーのはわかるでしょう。さて、結局ナニが言いたいのかというと、少年〜青年期に将来のことなどまったく考えずに、さんざんカッコつけて悪さして…とにかくいろんなことを経験しておけば、おっさんになっても気取らず気負わずエンジョイできるセンスが身につく。つまり「いい歳して、まだそんなことしてんの?」なんて言われても、むしろ嬉しくなっちゃう。そんな開き直りトランス状態にさせてくれる作品なのです。
あっ!でも今はFOXチャンネルではやってないし、アマプラにもネトフリにもないです。さらに日本語字幕付きDVD化なんてしてないです。どうにかして是非とも御覧ください。
瀬戸:マイケル・ジョーダン: ラストダンス (’20)
実は僕、映画、まったく見ないんです。テレビでたまたま流れてるのをなんとなく見ることはありますが、自分の意志で見ることはほとんどありません。
どれくらい見ないかと言うと、ハイスタンダードのドキュメンタリ映画「サウンズ・ライク・シット(’18)」でほぼ20年ぶりに劇場に足を運んだ、というレベルです。(それでもまんまと泣きました)
ただ、正に先週、ようやくアマゾンプライムとネットフリックスに契約しまして(主に子供と鬼滅の刃を見るため)、ほんとに年末年始に見ようと思っていたのがネットフリックスの「マイケル・ジョーダン:ラストダンス」です。
まぁ散々話題になったやつですし、ドキュメンタリーですし、何と言ってもマイケル・ジョーダンですし、今更ここで内容についての多くを語る必要もないかと思います。
簡単に言うとジョーダンの大学時代からNBAデビュー、2回の3連覇を達成するまでを、当時のジョーダン周辺のキーパーソンへのインタビュー、本人の未公開映像などを交えて振り返る、という内容です。
王道の楽しみ方で言うと、この作品はジョーダンの人となりにフォーカス初めてのドキュメンタリーである、という点です。と言うのも、確かにこれまでにあったジョーダン関連の映像や書籍って「ジョーダン、すげえ」を伝えるためのものばっかりなんですね。
まぁ、神様なので、その所以を探るっていうのは非常に深淵なテーマですし、どれだけやってもやり尽くせないのは当たり前なんですが。なので分かるのは神様としてのジョーダンばかり。でも今回の作品は、ジョーダンの「すげー嫌なやつ」な部分もたくさん描かれているとのこと。練習中にチームメイトを追い詰めまくるとか、やっぱりゲーリー・ペイトンのことはメチャクチャ嫌いだったとか。神様の美しくない一面て、見たくないですか?
そして《あんとき》フォロワーの僕らの楽しみ方と言ったら、やっぱりなんと言っても、劇中で登場するスニーカーでしょう掘り尽くされているジョーダンの王道のコートモデルよりも、ジョーダンがオフコートで履いていたモデルとか、改めて周りのメンバーの履いているモデルを追う方が面白いかと思います。
試しにチームメイトであるスコッティ・ピッペンのナイキ着用モデルを追うだけでも、フライト89、フライトハラチ、マエストロ、スウィフト、モアアップテンポ、マックスアップテンポ、からの自身のシグネチャーと、非常に味わい深いラインナップ。
シュプリーム別注のモアテンや、KITHのロニー・フィーグにリデザインされたマエストロなど、最近で再注目されてるモデルも多く、その横並びのモデルという意味では当時を知らない世代でもとっつきやすいデザインのはずです。登場する時代のメインはファッション的にも今改めてフォーカスされている90年代真っ只中なので、もちろん「アトモス?ブルースとチャプターに決まってんだろ」な僕らの世代には、上記以外にも胸の熱くなるモデルが目白押しのはずです。
また、つい最近にはこの作品の映像(多分初出し?)でジョーダンがオフコートで着用していたのが確認されたジョーダン1センターコートが発売されるなど、ナイキも憎いことしてくれちゃってます。
そんな感じでまだ見てない人はもちろん、一度見た人も改めてスニーカー深堀り目線で見直してみるのも面白いと思います。僕はこの年末年始はこの作品を見て、Stock Xあたりで復刻90’sバッシュを物色でもしようかなと思っています。